新型コロナウイルス感染症に感染すると嗅覚(におい)や味覚(あじ)が低下することが分かり、新聞やニュースで報道され話題になりました。
しかし、味覚の障害はインフルエンザや一般の「かぜ」でも生じることがあり、必ずしも新型コロナウイルス感染症だけが原因ではありません。
味覚障害の基礎知識
味覚障害には以下のような症状があります。
味覚障害の症状
- 味覚消退:味の感じ方が鈍くなる
- 味覚消失:味が全く分からなくなる
- 自然性異常味覚:口の中に何もないのに苦みや塩味などを感じる
- 解離性味覚障害:甘みやうまみだけが判らない喉
- 異味床:甘いものを食べていて苦いなどと違う味を感じる
- 悪味床:何を食べても嫌な味になる
私達が食物の味を感じるのは、舌の表面にある、味蕾(みらい)というセンサーが働くためです。
「味蕾」の中には味を感じる細胞(味細胞)があり、甘さや塩辛さなどの味を感知しています。
感知した味は味覚神経を介して脳の中枢に伝えられ、視覚・触覚・聴覚からの情報と統合されます。
このようにして私達はおいしさを感じることができるのですが、味覚障害はこの味を感じるための一連の仕組みが何らかの原因でうまく働かなくなることで起こります。
あまり知られていませんが、味覚障害の原因の6割ほどが「亜鉛不足」に関わっています。
亜鉛は味覚・臭覚を維持するのに必要なミネラルで、300以上の体内の酵素の働きに関わりがあります。不足すると味を感じる細胞が再生できなくなります。
味覚障害の原因
- 1位(全体の59%)亜鉛不足→薬の副作用・血液濃度の低下・糖尿病などの全身疾患によるものなど
- 2位(10.7%)心因性→うつ病など
- 3位(7.5%)風味障害→嗅覚の異常
- 4位(6.4%)口腔疾患性→舌の病気や口腔乾燥
- 5位(4.3%)神経障害→神経の障害
亜鉛不足は、薬の副作用や消化器系の病気で、亜鉛が体内に吸収されるのが妨げられて起こります。糖尿病や腎臓の病気では亜鉛が体外に排出される量が増えてしまいます。
健康な人でも食生活の偏りや過度の飲酒、過度の運動などで亜鉛が足りなくなることがあります。加工食品の添加物には亜鉛の体内への吸収を妨げるものがあるので注意が必要です。子供の亜鉛欠乏も問題になっています。
味覚障害の治療は耳鼻咽喉科が専門ですが、亜鉛が不足している場合の基本は、亜鉛の摂取です。亜鉛を補う薬剤の他、牛・豚・鶏のレバーや牡蠣などに多く含まれる食品を意識して食べるようにします。不足している亜鉛を補うことで、味を感じる細胞の再生を促し、味を感じやすくします。
心因性の場合は、抗うつ薬や抗不安薬など、心の治療を行います。薬の副作用で味覚障害が起こっている場合には、担当の医師と相談しながら、服用中の薬を見直し、場合によっては薬を中止することもあります。神経障害の場合には、効果が期待されるビタミン剤や循環改善薬などが使われます。
虫歯・歯周病・口腔乾燥(ドライマウス)などの歯科疾患が味覚障害の原因になる場合は、虫歯・歯周病を治し口腔環境を整え、含嗽・保湿剤などを処方します。常に口の中を清潔に保つことが大切ですので、 ブラッシングや定期検診などの口腔ケアを行います。