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歯肉炎って何? 歯周病との違いとは Blog

歯科医 永田 さやか (ながた さやか)
スカイ&ガーデン デンタルオフィス 院長

歯肉炎

お口の病気として有名な歯周病ですが、似たような言葉に歯肉炎というものがあります。どのような違いがあるのでしょうか?今回は、歯周病と歯肉炎の関係を通して、歯周病の進行について解説していきます。

歯肉炎は歯周病の重症度の1つ

歯周病は歯肉や歯を支える骨(歯槽骨)、靭帯(歯根膜)、歯根膜の繊維が付着するセメント質という4つの歯周組織が破壊されて歯がぐらぐらしてしまう病気です。しかし、歯周病になったからといって最初から歯がぐらぐらするわけではなく、少しずつ進行していきます。歯肉炎は、歯周病の進行度のうち、1番軽く、歯肉のみに炎症が起きている状態を指す言葉なのです。

炎症の違い

歯周病と歯肉炎の大きな違いは炎症の進行がどこまで進んでいるかです。歯周病の進行は、大きく分けて4つの段階があり、歯肉炎、軽度歯周病、中等度歯周病、重度歯周病の順に進行していきます。歯肉炎は症状が最も軽く、歯肉にのみ炎症が起こっています。それに対して、軽度歯周病以降は、その他の歯周組織も破壊されており、歯周ポケットが形成されている状態です。

歯周ポケットの違い

歯周ポケットは、歯と歯茎の境目にある歯肉溝という隙間が病的に広がってできたものを指します。歯肉の炎症や歯周組織の破壊によって深くなっていくのですが、歯肉炎と歯周病では成り立ちが異なります。歯肉炎は歯肉にのみ炎症が起きているため、歯の先端方向に向かって歯肉が腫れた分、歯周ポケットが増大しますが、炎症が治れば歯肉は元の状態に戻り、ほとんど元の状態に戻すことが可能です。これを仮性ポケットといいます。

それに対して、歯周病に移行して歯槽骨や歯根膜が破壊されている場合は、ポケットは歯の根の方向にどんどん増大していくのです。これを真性ポケットと呼びます。

真性ポケットができてしまっている場合、歯周病の治療を行ったとしても、歯槽骨などの組織を再生することが難しいため、歯茎が下がってしまったり、状態によっては歯をつなげる処置が必要となってしまうのです。歯周病の進行を把握するために、プローブという専用の器具で歯周ポケットの深さを測ります。

この値が2mm以内で歯肉からの出血がなければ健康な歯肉と言えますが、3mm以内程度で検査時に出血があれば歯肉炎、4mm以上であれば歯周病と判断します。

歯周病の進行と症状

■歯肉炎

歯周病のごく初期の段階で、炎症は歯肉のみにとどまっており、まだ歯槽骨などの歯を支える組織にダメージはありません。歯肉からの出血が主な症状で、歯肉がブヨブヨしている、歯磨きの時に出血するなどの症状がある場合は要注意です。歯肉炎の状態であれば歯磨き指導や簡単なクリーニングのみで治療が完了する場合もあります。

■軽度歯周病

歯の根を覆うセメント質に歯石が付着し始めたり、歯を支える靭帯や骨にも炎症が波及し、破壊が始まっている状態です。症状としては、歯茎からの出血や痛みなどが主ですが、場合によっては口臭やしみる症状などを感じることもあります。この状態で見つかった場合は、歯磨き指導やクリーニングに加えて、歯茎の中の歯石を除去するSRP(スケーリング・ルート・プレーニング)という治療が必要になります。

■中等度歯周病

歯の根を覆うセメント質に歯石が付着し、歯槽骨や靭帯が破壊されて歯を支える組織が減っている状態です。症状としては歯肉から血や膿が出たり、口臭がひどい、歯がぐらぐらするなどのわかりやすい症状が現れます。かなり歯周病が進行した状態であるため、一般的なブラッシング指導や歯石取りなどの歯周基本治療に加えて、歯周外科処置という外科処置が必要となる場合があります。さらに、治療がうまくいったとしても、歯を支える骨や歯肉がうまく再生せず、歯の根が露出してしまうこともあります。

■重度歯周病

歯を支える組織がほとんど破壊され、歯が歯肉に乗っているだけの状態です。歯がぐらぐらする、歯が動いて噛む度に痛い、膿の味がする、歯肉からすぐに出血するなど、生活に支障をきたすような症状も現れます。重度に進行した歯周病では、細菌が大量に増殖しており、放置すると心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病などのリスクが非常に高くなります。重度歯周病の治療としては抜歯しかないため、そうなる前に治療することがとても大切です。

歯肉炎の原因

日々の歯磨きが適切にできていないと磨き残しが溜まり、それを餌として細菌が増殖します。細菌の増殖に伴ってプラークが増え、歯周病菌が出す毒素によって歯肉が炎症を起こすのです。つまり、日々の歯磨きによって磨き残しをなくせば、歯肉炎やその先に現れる歯周病を防ぐことができます。

プラーク以外の原因

日々の歯磨きをきちんと行っていれば、歯肉炎や歯周病になる心配は少ないのですが、特定の疾患がある方やお薬を服用されている方、生活習慣などによっては歯肉炎を発症してしまうリスクが高くなります。

■常用薬がある

高血圧の治療に使用される「降圧剤」、てんかん治療に使用される「抗てんかん薬」などを常用していると、副作用によって歯茎が増殖(過形成)されることがあります。また、経口避妊薬や注射用避妊薬は、歯肉炎を悪化させる可能性が指摘されているため、歯肉炎の症状が改善しない場合はお薬を確認する必要があります。

■ビタミンC欠乏症

ビタミンC欠乏症は、ビタミンCが極度に不足することによって起こる疾患で、壊血病とも呼ばれます。ビタミンCには体内のコラーゲンを生成する作用があり、歯肉にとっても重要な役割を果たします。欠乏によって毛細血管が弱くなり、出血しやすくなるため、果物や野菜など、ビタミンが不足している場合はサプリメントなどで補う必要があります。

■白血病

血液のがんとして知られる白血病によって増血作用という血液を作り出す働きが阻害されると、免疫力の低下や貧血、血が止まりにくくなるなどの症状が現れ、歯肉においても炎症を引き起こしやすいという特徴があります。治療と並行して口腔ケアを行うことで、症状を最小限に抑えることができます。

■再生不良性貧血

再生不良性貧血は、血液を作る造血幹細胞の数が減少して血球が減少する疾患です。身体を細菌から守る白血球が減少することで、感染症に弱くなったり、赤血球が減ることで起こる貧血症状、血小板が減少することによる出血のしやすさ・血の止まりにくさなどの症状が現れます。歯肉においても同様に、出血傾向が見られることがあります。

■糖尿病

糖尿病の方は歯周病になりやすく、歯周病になると糖尿病が悪化しやすいという特徴があります。歯周病を治療すると、糖尿病の数値が改善するという報告もあるため、糖尿病の方や糖尿病になりかけている方、糖尿病の治療がうまくいかないという方は、ぜひ1度スカイ&ガーデンデンタルオフィスへご相談ください。

■ブラッシングが不十分

歯磨きの回数が少なかったり、歯磨きのやり方が適切でないと、口腔内にプラークが溜まりやすく、歯肉炎を発症しやすくなります。アルコールがプラークの生成に関わるという医学的な根拠はありませんが、晩酌をする方に歯周病が多いのは、酔ってそのまま寝てしまうために、夜の歯磨きを怠ってしまうことが原因の1つではないかという考え方もあります。

■喫煙習慣

タバコに含まれる200以上とも言われるさまざまな有害物質は免疫力を低下させ、あらゆる感染症に対する抵抗力を奪います。歯周病も1つの細菌感染であるため、当然喫煙者の方が非喫煙者よりもかかりやすくなってしまうのです。また、喫煙者の方は歯肉の血流が少なく、歯周病の歯肉から血が出るという症状が現れにくいため、知らず知らずのうちに悪化して、歯が抜けるまで気づかなかったという例も多く見受けられます。

■ストレス・睡眠不足

ストレスは万病の元と言われ、歯周病に関しても例外ではありません。同様に、睡眠不足や疲れは免疫力を低下させ、歯周病を悪化させる原因になります。なるべく規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜め込まないようにすることが大切です。

■親知らず(智歯周囲炎)

親知らずは前から8番目の歯です。親知らずが一部埋もれた埋伏歯になっている場合、露出した歯の部分に汚れが溜まりやすく、周囲に歯肉炎が起きることがあります。これが智歯周囲炎です。

歯肉炎と間違われやすいケース

ウイルスや真菌に感染すると、歯肉炎のような症状が現れることがあります。例えばヘルペスウイルスに感染すると、歯肉が赤く腫れたような色になります。また、真菌であるカンジダ菌が異常増殖すると、歯肉に白や赤の斑点ができて拭き取ると出血することがあります。これらのケースは歯磨きだけでは改善しないため、お薬による治療が必要となります。

歯肉炎の治療

歯肉炎の原因のほとんどはプラークなので、それを取り除くことが1番大切な治療法になります。そのためには歯科医院でクリーニングを受け、正しいブラッシング方法を身につけることが重要です。市販の歯磨き粉の中には、歯周病治療に良いと謳っているものもありますが、残念ながらプラークの中に薬剤が浸透することはなく、物理的に除去する他に有効な治療法はないことが研究でわかっています。

歯周病の予防法

歯周病だけでなく、虫歯を予防するためにも、適切な歯磨きの方法を身につけること、定期的に歯科医院で検査とクリーニングを受けることが大切です。歯肉炎から歯周病に移行してしまうと、治療期間や治療回数、治療費も増大してしまうため、定期検診を受けることが、長い目で見ると歯科医療費の節約になります。

スカイ&ガーデンデンタルオフィスでは、歯肉炎から歯周病まで、しっかりと治療することが可能です。お口のトラブルにお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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