お子様の口がいつも開き気味だと思ったことはありませんか?もしかしたら、それは「口腔機能発達不全症」の可能性があります。最近、子どもたちに増えている病名ですが、話す・飲み込む・食べるといった口の機能に関わる症状が現れるほか、全身の成長にも影響を与えます。そのため、放置しておくのは望ましくありません。今回は、「口腔機能発達不全症」とは何か、その原因や起こりうるリスク、治療法についてご紹介します。
こんな症状、お子様にあてはまりませんか?
以下の症状は、口腔機能に関わる発達不全に起因すると考えられるものです。
- 上手く噛めない、飲み込めない
- いつも口がぽかんと開いている
- いびきをかく
- 口呼吸している
- 舌足らずな話し方をする
- 指しゃぶりがやめられない
約5人に1人の割合でこれらの症状がある、という調査結果もあります。お子様がこれらの症状に当てはまると感じたら、一度歯科医院にご相談下さい。
口腔機能発達不全症とは
そもそも、「口腔機能発達不全症」とは具体的にどのような病気なのでしょうか?本来、乳幼児期から小児期にかけて発達する「噛む」「飲み込む」「発音する」などの機能が上手くいっていないことを指します。まだ聞きなれない方も多いかもしれませんが、「子どもの成長において『口腔機能の発達』を意識したことがありますか?」という質問に対し、普段から意識していると答えた方はわずか29.5%程度という調査結果があります。実は、虫歯や歯並びと同じくらい重要な課題なのです。
ライフスタイルの変化が増加の原因に
「口腔機能発達不全症」が増加した背景には、ライフスタイルの変化が大きく関与しています。柔らかい食べ物の普及により、噛む力が十分に発達しないことや、スマートフォンやタブレットの長時間使用による姿勢の悪化、口呼吸の増加などが主な原因と考えられています。さらに、口の筋肉を使う遊びの減少など、複数の要素が絡み合って発達不全を引き起こしています。
放っておくと起こる悪影響
「口腔機能発達不全症」を放置すると、歯並びや噛み合わせが悪くなるだけでなく、身体の正常な成長を妨げるリスクがあります。鼻呼吸ができないことで姿勢が悪くなり、口呼吸に頼ることで常に口が開いた状態になります。こうした悪い習慣が続くと、修正が効かなくなることもありますので、適切な時期に治療を始めることが大切です。
口腔機能発達不全症は、保険適用で治療できます
2018年から保険適用で治療が可能になりました。検査により、咀嚼・嚥下・構音機能が十分に発達していない、または正常に獲得できていないと診断された15歳未満の小児が対象です。これらの機能の十分な発達を治療の目的としていますが、副次的に歯並びや姿勢の改善も期待できます。
筋機能訓練(MFT)とは
「口腔機能発達不全症」の治療は、主に筋機能訓練(MFT)です。口周りの筋肉、特に舌や唇を鍛える訓練を通じて、正しい口腔機能の発達をサポートします。トレーニングは、紙風船を膨らます、ガムを噛む、唇でストローなどを挟んで落とさないようにする、のような簡単な方法です。歯科医師と相談し、具体的な回数や方法を決めて取り組むことが効果的です。月に一回程度通院して経過を確認します。
まとめ
「口腔機能発達不全症」は、近年、小児歯科領域で問題となっています。症状が進行すると、口腔機能だけでなく、普段の生活に大きな影響を及ぼす可能性があり、早期発見と早期改善が肝心です。最初に症状に気付くのは、多くの場合、保護者の方です。お子様の口がいつも開いている、いびきをかいているなど「口腔機能発達不全症」の兆候がみられた際は、早めに歯科医院にご相談下さい。保険も適用されますので、お子様が将来、口の機能で悩むことなく日常生活を送れるよう、サポートしてあげましょう。