こんにちは。武蔵浦和の歯科医院、スカイ&ガーデンデンタルオフィスの永田です。
前回から始まったインプラントブログ、第2回はインプラントが骨と結合する仕組みについてお話ししていきます。
インプラント治療は人工の歯根を顎骨内に埋め、その上に人工の歯(上部構造)を取り付ける方法です。
インプラント治療は、歯の土台となる人工の歯根(=インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を取り付け機能回復を図る方法です。自分の歯と殆ど変わらない咬み心地と、自然な見た目を手に入れることが出来ます。
丈夫なインプラントですが、時々患者様から「骨に埋めたインプラントが、ポロっと取れちゃったりしないの?」というご質問を受けます。
インプラントが「木片に金属ネジをねじ込む」ように骨に打ち込まれているイメージですと、確かに何かの拍子にインプラントが緩んで取れてしまいそうですよね。
しかしインプラントはただねじ込まれているだけではありません。
天然歯とはまた違った様式でインプラント体自体が骨と結合しており、理由がない限りポロっと取れたりはしないのです。
インプラント体は手術直後、周囲にあるネジのような凹凸で機械的に骨に固定されますが、その後時間の経過とともに組織的な骨結合を起こします。これをオッセオインテグレーション(Osseointegration)といい、チタンと骨が光学顕微鏡のレベルで直接的に一体化した状態を指します。
新たにできた骨がチタンの周囲につき、少しずつ表面の細かな部分に入り込み、インプラント体としっかり結合するのです。
1952年のオッセオインテグレーションの発見により、インプラント体と骨との結合力が飛躍的に向上しました。このことが今日のインプラント治療普及への大きな一歩となっています。
身体となじむチタン。
整形外科領域の人工股関節インプラントもチタン製。
お口の中のインプラント体が骨と結合することが出来る大きな理由の一つに素材がチタンであることが挙げられます。
チタンには幾つかの特徴があります。「生体親和性が高い」、「骨と結合出来る」、「耐食性が強い」、「軽くて加工しやすい」という点です。
生体親和性の高さは他の金属にはない利点であり、酸素と結びついて不動態皮膜というものを直ぐに形成出来るため、金属アレルギーを起こすこともありません。
私たちの身体の自己防衛能力は、人工物というものに対して強い拒絶反応を示すものです。しかしチタンであればほとんどの方が骨に埋め込むことが出来、埋め込んでも害にならないのです。
インプラント体が骨と結合するまでの期間について。
インプラントがいくら総チタン製だからといって、手術後すぐに強固に結合するわけではありません。インプラント治療は時間がかかるといわれる所以はここにあります。手術に時間がかかるわけではなく、「結合待ち」の待機時間が必要なのです。
チタンの素材そのものの向上や表面組織の改造、または保存方法など様々な部分で改良されたことで、一昔前に比べてインプラントが骨に結合するまでの期間は早くなりました。それでも平均して2.3か月は待機、ぐっと我慢の時間です。
歯槽骨は上顎と下顎では構造が違うので結合に要する期間も変わります。
下顎骨は皮質骨部分が厚くとても硬いため約2か月で骨結合します。
上顎骨は軽く隙間の多い海綿骨部分が多く、全体に軟らかいので約3か月と考えてください。
またインプラントを支える骨量が不十分でインプラント埋入と同時に骨造成を行う場合は、先ほどの期間に+1~2か月ほど延長します。
それよりさらに骨量が少なく、まず骨造成のみを行って支持骨を増やして、それからインプラントを埋め込む2段階の行程が必要な場合は半年程度の延長になります。
かなり長期間になりますが、その長さも移植材料に何を使うかや技術力によって大きく左右します。
最終的な人工歯(上部構造)は2週間ほどでできますが、まず仮歯で慣らし運転をしながら経過をみることが多いです。
その後最終的な上部構造を製作します。
オッセオインテグレーションが上手くいかない理由
オッセオインテグレーションはインプラント成功のカギといえますが、上手くいかない場合の主な理由を紹介します。
①骨の状態が悪い
骨は常に中身が新しいものに入れ替えられています。この骨の新陳代謝を「リモデリング」といいます。骨粗しょう症などが原因で骨の吸収と生成のバランスが崩れている、歯周病で骨が破壊されて状態がよくない、元々あった歯の細菌感染の範囲が広かった、といった場合には、インプラント体と骨の結合が上手くいかない場合があります。
リモデリングが正常に行われず、オッセオインテグレーションが上手くいかない理由となりえます。
②喫煙習慣
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があります。喫煙により血流が悪くなると、骨をはじめとする組織の修復に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、骨の結合に悪影響を及ぼします。
喫煙習慣があると歯周病が治癒しないのも同じ理由です。
そのためインプラント治療を受けていただく方には一定期間の禁煙が必要となります。
③手術中のオーバーヒート
インプラントの埋入手術では専用のドリルを使って顎の骨にインプラント体を埋め込みますが、その際ドリルの摩擦熱による骨へのダメージを防ぐため、注水しながら行います。
注水による冷却が不充分だったり、ドリルを強く骨に押しつけたりすると、摩擦によって骨が火傷のような状態になる「オーバーヒート」が起こってしまいます。これによりオッセオインテグレーションが上手く進まず、骨が結合しない可能性があります。
④術後の細菌感染や強い衝撃
手術後に細菌感染を起こしたり、治療箇所が強い衝撃を受けると、オッセオインテグレーションに悪影響が出てしまいます。
処方された薬は、自己判断で服用を中止したりせず、指定されたとおりに飲み切るようにしてください。
インプラント体と骨がしっかり結合するまでは、仮歯を揺らしたり、硬いものを噛んだり、激しい運動をするなどの行為は避けましょう。
⑤糖尿病などの全身疾患や歯周病
糖尿病をはじめとする全身疾患は、インプラント体と顎の骨が結合しにくくなります。また、手術による傷の治りも遅くなります。
手術が必要という性質上、全ての患者さんが受けられる治療ではありませんが、インプラント治療は歯を補うための方法としては安全かつ機能性、審美性に優れた方法です。スカイ&ガーデンデンタルオフィスではの日本口腔インプラント学会の専門医も治療に対応しております。
他の医院でインプラントができないといわれた方も是非ご相談ください。
次回のブログでは歯科衛生士堀内が自身のインプラント治療について書きます。
インプラントについてもっと知りたい皆様は、武蔵浦和の歯科医院スカイ&ガーデンデンタルオフィスまでお気軽にお問い合わせください。